プラモ・初めてのエアーブラシ塗装(塗ってみよう)

塗装自習室

エアーブラシはプラモデルを綺麗に塗装するのにとても便利な道具ですが初心者には「どうやって使うのが正解かわからない」と悩んでしまって手が止まる人もいるかと思います。
「エアー圧は?」「塗料の濃度は?」「どうやったら綺麗に塗れる?」と色々調べても情報が多すぎて、かえって混乱してしまうかもしれません。
その理由は「エアーブラシ塗装に絶対の正解はない」からです。
今回の紹介する方法も「絶対の正解ではありません」が私が失敗してきた中で学んだ「初心者が失敗せず塗装する方法」のひとつと考えてください。
まずは実際塗ってみて「塗装したプラモデルの最初のひとつを完成させる」のが大事だと思います。

塗料を使う前に

エアーブラシ塗装に限らずプラモデルを塗るときは持ち手を付けた方が便利です。
まずは、パーツを適度に分割して「今回塗る色のパーツ」全てを塗装台にセットしておきます。
パーツ分割の目的は「小さく軽くして取り回しを良くする」と「塗分け」ですので、何が何でもバラバラに分解する必要はありません。
色々な角度から吹けて塗装後乾燥まで保持できれば良いのです。

エアーブラシ用に塗料を準備する

使用する塗料は体質さえ許せば「ラッカー系塗料」をおススメします。
ラッカー系塗料は「溶剤でどれだけ薄くしても発色する」「他の塗料の溶剤に負けない塗膜の強さ」と、その性能の高さでは他系統の塗料を圧倒しています。
特に「濃度がテキトーでも発色する点」は、エアーブラシ塗装の初心者には重要なことかと思います。

ラッカー系塗料は「有機溶剤特有の臭い」と「毒性が高いイメージ」から敬遠する方もいるかと思います。
しかしながら、臭いは防毒マスクさえすればほぼ気になりません。
「プラモデル用塗料」の毒性は毎日数時間の塗装を年単位で行う人以外はほぼ気にする必要はない程度です。
(一応有機溶剤を含むので毒性はありますが、ラッカー系の劇物指定は可燃性の注意喚起のものです)
ただし粉塵は確実に体に悪いので、直接ミストを吸い込まないように換気はしっかりしましょう。
水性塗料でもエアーブラシは使えますが、適正濃度の調整が難しいです。
せっかく日本では合法的にラッカー系塗料が使えるのですから、あえて扱いの難しい塗料を選択しなくても良いかと思います。

エアーブラシ用の塗料の希釈で迷ったら

エアーブラシはエアーの勢いで塗料をミスト状に飛ばして塗装する技法です。
塗料が濃いと重すぎて飛びませんし、塗料が薄いと運ぶ塗粒が少なすぎてなかなか発色しません。
「エアーブラシ用塗料の適正濃度はどのくらいか?」と悩む人は多いと思いますが
「塗装の目的や条件によって適正濃度は違う」と言うのが一応の答えです。
エアーブラシ塗装の要素は

  • 塗料の種類
  • 塗面の広さ
  • 使用圧力
  • ブラシとパーツの距離
  • ブラシを動かす速度

それでは「初心者はどうすればいいのか?」と言うことで
まずは慣れるため失敗しにくいように「条件を固定」して練習するのをお勧めします。

低圧低濃度塗装のすすめ

初心者には以下のメリットのため「低圧低濃度塗装」をおすすめします。

  • 発色が弱いので失敗してもリカバリーがしやすい
  • 近い距離で吹ける
  • 塗料の消費が少なくてすむ
  • 粉塵の舞う範囲が狭いので換気しやすい
  • グラデーション塗装などの練習にもなる
  • コンプレッサーの能力を選ばない(圧力を落とす調整はどれでもできる)

もちろん、広い面を塗るのに時間がかかる・塗膜を厚くするのに時間がかかるなどデメリットもあります。
しかしながら初心者のうちは「どばっと吹いてテカテカの分厚い塗面という失敗」を失くせるメリットの方が大きいと思います。
「高圧高濃度塗装」は時間効率がすごく上がりますが、塗料を半分以上捨てながら吹くことになるので、どちらかと言うと玄人向けの塗装法かもしれません。

塗料を希釈してみる

エアーブラシ用塗料の希釈に関して「大体2倍から3倍」とかなり大雑把な感覚でよいです。
要するにエアーブラシで吹いたときに「きれいなミストがでる」ように塗料の粘度さえ調整すれば、ラッカー系塗料であれば「薄くても吹けます」

塗料はよく攪拌する

まずは塗料をサラサラにするために「調色スティックで塗料ビンの塗料を混ぜます」
混ぜる目安は「底にたまった塗料がほぼ剥がれスティックに抵抗がなくなるまで」ひたすら混ぜまくります。
初心者が「何か吹きにくいな」と思う場合、まず攪拌不足を疑ってください。

「ビンを振って混ぜる」方法はおすすめしません。
底に溜まった塗料が混ざるまで振るぐらいなら調色スティックを使った方が時間的に早いです。
また、振って混ぜるとビンの口や内ぶたにべったり塗料がついてしまいます。
そのため「ふたを開け閉め」する際に誤って手が汚れたり、閉じて保存している間に固着してふたが開かなくなったりと、デメリットの方が大きいためです。

塗料を塗料皿に移す

次に塗料ビンから塗料皿に塗料を移します。
この時も「調色スティックで一滴ずつ」移していきましょう。
多少時間はかかりますが、回数を数えれば毎回同量を出すことも出来ますし、調色する場合も割と正確な割合で混ぜることができるからです。
大体10~15滴ほどでエアーブラシのカップに半量ぐらいの塗料ができるでしょう。
「ビンを傾けて調色スティックを伝わせて移す」方法はおすすめしません。
どうしてもビンの縁に塗料が残りますし、量のコントロールも難しいからです。
それから、「エアーブラシのカップに塗料をビンから直接そそぐ」のはやめてください。
溶剤を入れたカップに塗料を注いでうがいで混ぜるやり方は「一見便利で楽そう」に見えます。
しかしながら塗料の攪拌不足やノズルのつまりの原因にもなるので、結局塗料皿を使う方が失敗もなく効率が良いです。

塗料をうすめ液で希釈します

塗料皿に塗料を出したら、別の塗料皿にうすめ液のみを移しておきます。
塗料の希釈にはスポイトを使って少しずつ行います。
まずは塗料にかぶる程度に溶剤を取って、調色スティックでよく攪拌します。
この状態ではまだまだ粘度が高いと思いますので、「少しずつ溶剤を取っては混ぜる」を繰り返します。
イメージはケーキやお好み焼きなどのように「粉を水に溶く」です。
一気に溶剤を大量に入れると、塗料の塊(ダマ)になり上手く攪拌できないことがあります。

塗料の希釈目安は

塗料の希釈濃度に正解はないですが、以下を目安に「よく見ながら」調整します。

  • 塗料皿を傾けるとサラっと塗料が移動する
  • 底に付いた塗料を混ぜると一瞬だけ皿の底が見える程度には粘度がある
  • ハンドピースのカップに移す際、最後の一滴までスムースに落ちる

初心者のころは希釈率よりも「とにかく混ぜて塗料を粉々にする」イメージで「しっかり攪拌する」ことを意識する方が塗りやすい塗料が作れると思います。

塗料皿を使うわけは

「塗料の希釈には塗料皿をおすすめ」するのは、激しく混ぜても傷みにくい堅牢さと金属下地で塗料の色や濃度を把握しやすい視認性の良さのためです。
紙コップは使い捨てが出来て大量の塗料を扱えるので便利ですが、低圧低濃度塗装では「大量の塗料を作っても持て余す」ので私は使っていません。

塗料は乾燥すると硬化して落ちにくくなるので、混ぜ終わったらすぐに調色スティックをティッシュで拭って清掃しておきます。

コンプレッサーのエアー圧を調整します

塗料を準備出来たら、カップに塗料を移す前にエアー圧を調整します。
今回はキャラクターモデルを均一に塗装(ベタ塗)ことを想定しています。
エアー圧はエアーを出した状態(定格圧力)で「通常塗料なら0.04mpa」ぐらいにします。
エアーを止めた状態(最大圧力)が0.06mpaあれば、吹き始めも十分な風量になります。

塗料をハンドピースのカップに移します

エアー圧を調整したら、塗料を皿からカップに移します。
このときの塗料の垂れる量で「塗料の濃度」が大体わかります。
「最後の一滴が皿の縁から落ちない」場合は濃すぎです。

塗料を攪拌するためうがいをします

塗料はカップに入れている間もどんどん乾燥します。
そこで乾燥した塗料を攪拌するため「そろっと」うがいをします。
このとき「塗料の泡がシャボンのように割れずに登ってくる」と思います。
そこで、塗料皿に出したうすめ液をスポイトで1~2滴垂らしてシャボンを割ります。
そのまま、シャボンにならず「こぽこぽと小さい泡ができれば」適正濃度です。

使い終わった塗料皿は塗料が乾く前にティッシュで荒く吹いておくと後の清掃が楽になります。

試し吹きをします

まずは「ぶわっと一気に吹いて(ボタンを押しながら素早く全開で引く)」ノズル先端の塗料を吹き飛ばします。
しばらく塗料を吹き続けると流路が掃除されて「綺麗な吹き付け音」に変わります。
いつまで経っても「ぴぴぴっと不規則な断続音」がする場合、塗料が濃すぎるかエアー圧が不足しています。
塗料が濃すぎるとノズルキャップ内の圧力不足で上手く塗料が砕けず綺麗なミストになりません。
また、エアー圧が低すぎると同様に、上手くミストにできません。
塗料を薄めたり、圧力計で圧が下がっていないか確認してください。

次にテストピースに今回塗装する目的に合わせた、距離と吹き幅(ボタンの引き)で吹いてみます。
低圧塗装でベタ塗する時の距離は私の場合3~4cm(指2本分ぐらい)です。
意外と近いですが、これ以上離したい場合はボタンを半分以上引いて塗料の吐出量を増やして対応しています。
「塗りやすい距離」は個人に寄って変わるのであくまで目安です。

試し吹きをするわけは

試し吹きの目的は「綺麗なミストが吹けるか?」の確認です。
特に低圧塗装の場合、適正距離で吹いてみると「ミストを肉眼で確認する」のが困難です。
そのため実際に吹いてみて「スムーズに塗料が出るか?」「塗料の粒が揃っているか?」を確認するのです。
私はテストピースには、紙パックなど耐水紙を使っています。
プラスチックより「塗料の乗り」がよいのとコスパの面でとても便利です。

カップに入れた塗料の濃度を調整するには

塗料が濃すぎた場合

カップに塗料を入れたままスポイトで1滴ずつうすめ液を足して、うがいで攪拌しつつ調節します。
薄めすぎに注意しながら綺麗なミストが吹けるようにします。
「薄めても塗料がでない場合」はノズル付近の塗料が乾いて固まっている場合があります。
とりあえず「ぶわっと一気に吹く」を数度繰り返しノズル先端の塗料を吹き飛ばしてみます。
それでも詰まる場合はエアー圧を上げて再度試してみます。

「ノズルの外側で塗料が溜まっている場合」は、うすめ液を付けた綿棒で拭き取りをします。
「ニードル先端で塗料が固まった場合」は塗料がこぼれないようにノズルキャップを外してノズル先端とニードルのスキマをうすめ液の付いた綿棒でサイドからそっと拭ってみます。

塗料が薄すぎた場合は

面倒でもカップから一旦皿に塗料を戻して調整し直しましょう。
カップ内に直接塗料を足して濃くするのは以下の点でお勧めできません。

  • うがいだけでは上手く攪拌できない
  • カップ内で激しく混ぜるのはニードルを傷つける恐れがある

塗料を濃くするには塗料希釈の手順を始めから再度行うことなので、カップ内での作業は不向きです。

いよいよ塗装します

綺麗なミストが吹けるのを確認できたらいよいよ塗装です。
ハンドピースの動きの注意点は以下になります。

  • 動かす速度は「習字で文字を書く時」程度の速度
  • ハンドピースの距離や速度で塗料の乗る量を微調整する
  • ミストは出来るだけ「パーツに垂直にあてる」
  • 同じ場所を吹きすぎない
  • 吹き始めと吹き終わりはパーツから離す

気楽にエアーブラシ塗装を楽しみましょう

色々注意点を上げましたが、基本的に「ハンドピースを動かし続ければ」垂れる等の事故は起きません。
塗装は慣れて上達するしかない部分があるので、まずは安いキットでも良いので実際塗ってみましょう。
「ペットボトル」や「スプーン」など形状の単純なもので練習してもあまり効果はないと思います。
なにより、「スプーンを塗っても何も面白くない」ですしね。

何度も重ねて塗装をする

1回目の塗装は「足付け」を兼ねて薄く1層塗料を乗せるように行います。
プラスチックの表面は非常に滑らかなのと塗料樹脂と材質が違うためで、塗料が定着しにくくなっています。
そこで、1回目は「発色もムラも塗膜のざらつきも無視して」パーツの全箇所に塗料が触った状態を目指して吹き付けます。
発色して艶がでるまで吹こうとすると塗料後垂れる事故が起こりがちです。
「テカっとパーツが濡れたら」物足りなくても一旦吹くのは止めましょう。

吹き付けはエッジ(逆エッジ)から始めます

エアーブラシのミストは放射線状に飛ぶため中心部が一番塗料を多く含みます。
またエアーの勢いで塗料を飛ばすのでパーツに斜めに当たると弾かれて上手く塗料がのりません。

別に全箇所に塗料が乗っていれば平面から吹いても良いのですが。
「吹き忘れ防止」とエッジには塗料が乗りにくい性質を生かして「現在吹いてるエアブラシの条件に慣れる練習」のために、エッジから吹いた方が無難です。

「エッジにダムを作って平面の塗料をせき止める」と言う技法も聞いたこともあるのですが。
今回紹介するのは低圧低濃度塗装なので、あくまで全面全方向から塗料を乗せればどんな吹き方でも良いと思います。

2層目以降も薄く重ねていく

2回目の塗装は「線を描いて面を埋める」ように薄く塗料を乗せて発色させていきます。
1回目の塗料はパーツを廻し吹きしている間にほぼ乾いていると思います。
特に乾燥時間はとらず、すぐに2回目の塗装に入ります。
ムラをなじませるように「色が薄い場所をよく見て」ブラシを動かしていきます。
2回目の塗装は「足付け」ができているので比較的楽に発色するようになると思います。
しかし艶がでるまで吹くとやはり垂れる可能性があるので、ほどほどで止めておきます。

徐々に発色させていく

2回目以降の塗装は「徐々に発色させる」ように薄く塗料を乗せていきます。
全体的に下地の色が目立たない程度まで、廻し吹きで乾燥させながら発色するまで繰り返します。
左の写真は「パーツの上で吹き終わり」をしたため、粒状の塗料が飛び散っています。
今回は完全に発色させるまで塗膜を重ねるので、それほど気にしなくて良いです。

吹き付け中も塗料の濃度に注意する

吹き付け中も塗料の溶剤はどんどん揮発していきます。
一通り廻し吹をしたら、一度うがいをして「出てくる泡の状態」を確認しましょう。
少し濃いなと思ったら都度、薄め液をスポイトで足して濃度を調整します。

仕上げの塗装をして塗膜を作る

仕上げの塗装は「均一な塗膜」を作るために、「距離は少し遠目の塗料は少し多め(ボタンを引き気味)」でふわっと全体を濡らすように吹き付けます。
パーツ表面をよく見ながら「じょうろで水を撒く」様に「ゆっくりとエアーブラシを動かしながら」塗料を重ねていきます。
少しブラシを遠目で吹くので、カップに薄め液を足して「しゃばしゃばの塗料」にすると吹きやすくなります。
垂れる限界まで吹く必要はなく、「触ると駄目」程度のほどほどで吹き終わり、あとは乾燥を待ちます。

塗料は乾燥してうすめ液が抜けていく過程で「均一になる」性質があるので、塗り終わりに多少ムラがあると感じても乾燥すればムラが消えて滑らかな塗装面に変化すると思います。
吹きすぎると「削るしかない」ので、あくまで「ほどほどで止める」のがコツです。

最後はエアーブラシを清掃して完了です

エアーブラシ塗装は正直「段取りがメンドクサイ」です。
しかしながら、重ね塗りで発色させるので初心者でも簡単に綺麗な塗装がしやすい手法でもあります。
慣れれば「筆塗りが怖くなる」ぐらい便利なので、是非沢山のキットを塗って楽しんで下さい。

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