せっかく高価なエアーブラシを買ったのなら色々な塗装方法を試したいものです。
エアーブラシの代表的な技法としてグラデーション塗装があります。
ここでは特に効果的な美少女プラモデルの髪の塗装を例に解説していきます。
髪のグラデーション塗装は、比較的に簡単にオリジナリティや高級感が出しやすくお勧めです。
グラデーション塗装とは
異なる2色を段階的に変化させる塗装方法です。
ラッカー塗料は透けやすいので「明るい色」に「暗い色」を重ねるのが基本になります。
ここでは説明しませんがアクリルは発色が強いので「階層的に色を変化させるアニメのような塗り方」になります。
ただし、エアーブラシなら薄く何層にも重ねて吹けるので塗る順番はあまり気にしなくても良いでしょう。
エアーブラシがグラデーション塗装に有利なのは
エアーブラシは塗料をミストとして放射線状に飛ばす塗装ツールです。
中心の塗料は多く、中心から離れるほど塗料は少なくなります。
また、塗装面に垂直にミストを当てないと弾かれて塗料が乗りにくくなります。
この薄くかかった塗面(ぼやけているのでボケ足と言います)を意図的に作れるので、エアーブラシによるグラデーション塗装は筆塗りより簡単にできるのです。
グラデーション塗装はエアーブラシの設定が必須
グラデーション塗装をするためには以下の2点が必要になります。
- 狙ったところをピンポイントで塗れること
- 一気に発色させず段階的に発色させること
そのために「エアーブラシでの細吹き」が必要になります。
- 狙ったところを吹くために、エアーブラシと塗面の距離を近づける
- 距離が近いことによる吹き返しで塗料が流れないようにする
- 一気に発色しないよう塗料(含まれる顔料)を薄くする
上記の条件を満たすため「エア圧は低め塗料は薄め」がグラデーション塗装の基本です。
実際のグラデーション塗装のエア圧と濃度
ここでは、ラッカー塗料を使用し0.3mmノズルのエアブラシの条件を記載します。
エアー圧は定格0.035以上最大0.06Mpa程度
これ以上低いとノズルキャップ内の圧力が少なすぎて綺麗なミストに分解できません。
ベタ塗より気持ち低めの圧力にして「圧力低すぎに注意」です。
細吹きは「レバーの引き(塗料の吐出量)」で調整
ミストは放射線状にでるので「距離近い・塗料少ない・動き速い」ほど細い線が描けます。
エアー圧や塗料濃度の調整ではなく、レバー操作で線の細さを変えるのが基本となります。
塗料の濃度はベタ塗より少し薄い程度
塗料1に対して溶剤2~4ぐらいに薄めます(4倍希釈)。
あくまで薄めるのは弱い圧力で綺麗なミストを作るためです。
もちろん発色を弱める狙いもありますが、発色を弱めるなら「クリアーを混ぜる」方が良いです。
あまりシャバシャバにすると塗装面がすぐに濡れて流れやすくなり、逆に吹き付けにくくなります。
細吹きのコツ
細吹きは薄い塗料を使うので、ニードルに押された塗料がノズル先端に溜まりやすいです。
溜まった塗料は吹き始めの際、水滴になって飛び散り塗面にを汚してしまいます。
吹き始める前は「エアーの空吹き」をして溜まった塗料を吹き飛ばしておきましょう。
できれば、吹き終わりも「ブラシを塗面から遠ざけてからレバーを戻す」方がよいです。
また、「ニードルキャップを外してエアーブラシを使う」のもおすすめです。
細吹きは出来るだけ近くで吹く方が細くかけますし、狙った場所も吹きやすいです。
ニードルキャップを外すメリットは、
- 視認性が良くなる
- 塗面まで更に近づけられる
- ニードル先端の塗料溜まりが見つけやすい
と、結構多いです。
ただし、ニードルが剝き出しになるので破損とケガには注意が必要です。
グラデーション用に塗料を準備する
塗りたい色を「基本色」として「暗色」と「明色(ハイライト色)」を準備します。
黄色からピンクなど異なる色の変化のときの「中間色」も基本的に「暗色」と同様の選び方で良いです。
「ハイライト色」は簡単で「基準色に白を混ぜるだけ」で出来ます。
「暗色」は単に黒を混ぜると「彩度と明度」が動きすぎるので思った色になりません。
暗色は基準色に「赤味」「青味」「黄味」がある近似色を市販の色から選ぶのがおすすめです。
「基準色に純色(赤・青・黄色)を混色して作る」方法もありますが、管理が面倒くさいのと再現性がさがるのでおすすめできません。
近似色での混色であれば「基本色」と混ぜる量も減らすことができます。
おすすめのグラデーション塗料パターン
グラデーション塗装の「暗色」には一応定番のパターンがあります。
- 白→紫(スミレ色)または青
- 赤→紫(赤味・青味)
- 青→紫(赤味)または紺色(黒味)
- 黄→茶・オレンジ・ピンク(赤味)または緑(青味)
- 緑→濃緑色(黒味)
- 紫→紺色(青味・赤味)
- 茶→こげ茶(黒味)
- ピンク→赤(赤味)
- 黒→基本色を紫っぽい黒→ハイライトに強めのクリアホワイト
ぶっちゃけ暗色は「色の差」さえあればあまりこだわらなくても良いです。
最近の髪の塗装は「ハイライトが多めの淡い色合い」が主流です。
暗色はわずかに残る程度、基準色ですらほぼハイライト色のように塗ってしまいます。
プロの彩色見本でもない限り多少の色のズレは「作品の個性」で済むと思います。
グラデーションの塗り方(塗る順番)
基本は「基本色→暗色→基本色→ハイライト色」の順番です。
まずは基本色を全体にベタ塗
グラデーション塗装は薄く塗り重ねるので下地が発色に影響しやすいです。
まずは均一な色味の下地を作るため基本色を塗ります。
あくまで下地なのであとで塗る色に影響がなければ、必ずしも吹く必要はありません。
実際は「未塗装の成型色」や「白サフ」を下地にすることが多いです。
次に暗色を「影になる部分」を細吹き
髪の毛のパーツの下方向から、髪の谷間を狙ってブラシを動かします。
エアーブラシは中心から垂直にミストが当たる場所が一番発色します。
当然髪の毛の奥は発色しにくく、髪の山側にも塗料はかかります。
後ほど修正はするのではみ出しは気にせずしっかり発色させましょう。
基本色で全体を発色させる
暗色が塗り終わったら全体を発色させていきます。
髪のパーツの上方向から、髪の山側を狙ってブラシを動かします。
エアーブラシは吹き重ねるほど発色していきます。
- グラデーションの境界を意識する
- 少し離れた位置から塗り始める
- 基本色の範囲を徐々に広げて暗色を塗りつぶす
一気に発色させようと同じ場所でブラシを小刻みに動かすのではなく、吹き重ねる回数で発色させましょう。
暗色の影響を受けた基準色が、「良い感じの中間色」なってくれます。
最後にハイライト色を吹き付ける
髪の山側や頭の上部(いわゆる天使の輪)を狙って細吹きします。
ここで色がはみ出しすぎるとせっかくのグラデーションが消えてしまうので注意が必要です。
ほどほどで止めておく方が良いかもしれません。
髪の山側に強いハイライトがある「アニメ調」で塗りたい場合
ハイライトもエアーブラシで吹く限りボケ足(周囲に塗料の粒が見える部分)は発生します。
塗料が届きにくい髪の谷間でも完全に塗料が回るのを防ぐのは難しいです。
そこで、塗料を吹く順番を変えて「削って修正する」のも手です。
先にハイライト色を吹いて「クリアーを一層吹いて保護」してから影色を吹きます。
はみ出た影色を「メラミンスポンジ」でやさしく削って「ハイライト」を出していきます。
クリアー層は削りだすときの保険です。
先にハイライト色吹くのは、「奥まった場所をやすり掛けするのは難しい」ためです。
髪のハイライトやマルチカラーは筆塗りを併用してしまう
エアーブラシがあるからと言って全ての作業に使う必要はないです。
くっきりしたハイライトや一部の毛束を違う色にするマルチカラーは筆塗りの方が簡単にできます。
筆塗りは筆目が気になりますが、「クリアで薄めたハイライト色」や「つや消しクリア」でオーバーコートしてしまえば目立ちませんし、髪の毛はそもそも毛束のムラがあるものです。
エナメル塗料や水性塗料など下地を侵さずウォッシング(塗面で塗料を動かす)できる塗料を筆塗りで描きこむ方が自然な塗装になることもあります。
グラデーション塗装のざらつきを修正する
エアーブラシはミストを飛ばして塗装するので、どうしても中心から離れるほど粒子感がでます。
粒子感を失くすため吹きすぎると、透過を生かした中間色ができません。
綺麗なグラデーションを作るには、余分に広がった粒子を消すために明色と暗色を何度も行き来しながら狙った境界線になるように吹き付けを繰り返すのが基本です。
ただし、塗料を何度も交換するのは正直メンドクサイです。
そこで、「荒めのグラデーション」で一旦手を止めて「クリアーで薄めた明色でコート」する手法がおすすめです。
お手軽にグラデーションをなじませる
実際の手順は以下の通りです
- 暗色から基本色でグラデーションを掛ける
- 暗色を潰しすぎないように狙った境界より手前で止める
- 基本色を塗料皿に戻し「戻った塗料の倍のクリアーを足して」再度溶剤で薄める
- 出来上がった「基本色クリアー」は塗料1に対してクリア8ぐらい
- 境界付近から吹き始めて最終的に「てかっとパーツが濡れるまで」全体を吹き付ける
全体に均一な塗膜を作ることにより塗料の流展性(平滑になる力)が出て粒子感が消えます。
顔料は残っているので重ねて吹き付ければある程度発色して境界の修正もできます。
髪の毛のどこにグラデーションをかけるか
髪にグラデーションを掛ける目的は塗装で陰影をつけて立体感や質感をだすためです。
暗い色になりやすい場所は
髪の毛の毛束がまとまっている部分(つむじ・分け目・毛先)
光が当たらない部分(前髪の裏・もみあげ・えりあし)
逆に明るい色になる部分は
強く光が当たる部分(おでこ周辺・跳ね毛)
髪の毛が広がっている部分(透けやすい場所)
軽さを表現したい部分(黒髪や茶髪の毛先)
定番の箇所はありますが「あくまで模型的な誇張表現」なので、色々な作品を真似て試してみるのもプラモデル塗装の楽しみの一つだと思います。
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