美少女レジンキットでサフレス塗装の練習をしてみる

塗装自習室

ワンダーフェスティバルなど、美少女レジンキットを手に入れる機会は増えました。
SNSでは市販品や作例もたくさん見られます。
しかしながら「頑張って作りました」で完結する記事がほとんどです。
そこで「初めてのレジンキット製作」に最低限必要な工程を紹介したいと思います。
作例はCASTAILさんの「1/24モデルさん(仮)」です。
このキットはカーモデルの標準的なスケールで、かつ「美しいディフォルメ」がとても素晴らしいです。
パーツ分割も最小限に抑えられてるので、「組立」「塗装」の練習にも丁度良いキットです。

レジンキットは買ったらすぐパーツチェック

個人製作のレジンキットは購入したら組まなくてもすぐに「パーツチェック」します。
個人で梱包まで行っているので、どうしても漏れや間違えなどミスが起こります。
不足パーツのサポートはしてくれますが、期間は短いので急いでチェックしましょう。

まずは仮組です

パーツ構成は左右腕と胴体は一体成型の3パーツです。
現在のレジンキットはダボがしっかり作ってあり、位置決めも容易になっています。
ただし、レジンの特性上プラモの様に「溶着(溶かして接着)」は不可能です。
組立は瞬間接着剤による「抵抗接着(接着剤をスキマに充填し硬化させる)」でおこないます。
抵抗接着は衝撃(ズレ)に弱いので、「ズレないための軸打ち」が破損防止のため必要になります。
ただし、「ズレる心配がない(十分大きいダボ)」場合など「軸打ちは必須」ではありません。
また、塗装後に組み立てたい場合も「位置決めのための軸打ち」をする場合があります。
今回はパーツが細かいので破損防止のため0.5mm真鍮線で軸打ちしました。
また、キットは自立が難しいのでベースとの接続軸に1.0mm真鍮線を打っておきます。
「塗装時の持ち手」にもなるのでここも軸打ちした方が良いと思います。

レジンキットの合わせ目消し

腕のパーツは抜きの関係で分割されています。
「人体に合わせ目がある」と途端「不自然になる」のでここは処理したいところです。

前述通りレジンキットは溶着できないので、合わせ目消しも瞬間接着剤を使用します。
「ホワイトレジン」には馴染みやすい「シアノン」や「瞬間接着パテ」がお勧めです。
しかしながら「量が多く」「高額」なので、使用頻度の少ない私では持て余します。

そこで、今回は「百均の瞬着にベビーパウダーを添加」した「簡易瞬着パテ」を使用しました。
ベビーパウダーの「タルク」は粒子も細かく「適当に混ぜても使える」のでコスパは良いです。
ある程度粘度がでるまで添加すれば、「盛り付け」や「形状出し」もできます。
時間さえかければ硬化するので「硬化促進剤(高額)」が不要な点も初心者向けだと思います。

完全硬化後は瞬間接着剤同様かなり硬いです。
#240番の荒めのヤスリでしっかり形状出しをしてから#400番までやすり掛けをして処理します。

レジンキットは塗装前の処理が必須

レジンは「対溶剤性が強い」ので基本的にはプラモ用塗料が乗り(食い付き)ません。
そこで、「プライマー・サーフェイーサ」など「粘着性物質」を下地に吹き付けます。
今回はガイヤの新マルチプライマーをエアーブラシで薄く2層吹き付けました。
表面に一層塗膜が出来て艶が整うので「やすり傷等」が見えやすくなる効果もあります。
ただし、透明で「傷隠し」の効果はないので見つかった傷はヤスリ掛け等で処理しておきます。

レジンキットのサフレス塗装

現在の美少女フィギュアの塗装トレンドは「ホワイトレジンを活かしたサフレス塗装」です。
現実の人間の肌は「筋肉(赤)や脂肪(白)の表層に皮膚(半透明)が存在」します。
塗装をすると「塗膜が一層出来る」ことによりどうしても「のっぺり(均質)」した印象になります。

そこでクリアー塗料を薄く何層も吹き付け、徐々に発色させていきます。
ムラや粒子感をあえてつけることで、「自然な肌の質感」を狙った塗装法です。
下地を活かした「複雑な質感(テクスチャー)」が出来るのがサフレス塗装のメリットだと思います。
クリア塗料は「吹き付けるほど暗くなる」ので、比較的簡単に「無段階のグラデーション」ができます。
一応筆塗りでも「ブレンディング」や「フィルタリング」で同様の表現も出来るのですが・・・
筆で「鮮やかさ」と「自然さ(くどくない)」を出すのはとても難しいです。

「サフレス塗装のためだけでもエアブラシを買う価値がある」と思います。

まずは褐色肌のサフレス塗装

今回は実験として「褐色肌」に挑戦しました。

褐色肌サフレス色「サフレスフレッシュピンク 2:サフレスフレッシュオレンジ 1+クリアブルー少量」
通常肌の塗料にブルーを少しずつ足して好みのこげ茶色にします。
ブルーはかなり強い色なので、一瞬で茶色になると思います。
調色スティックの背に乗せた極微量のブルーの塗料を、混ぜ込みながら暗く成り過ぎないように調色。
「塗料皿上ではかなり暗くみえる赤茶色」にしました。
クリアー塗料は下地の影響を受けるので、塗装しながら調整した方が良いかもしれません。

肌のシャドーを吹く場所を考えます

まずは、凹んでいる部分や影になりそうな部分を細吹きして発色させます。
肌のシャドーは「明るくなる場所の周辺」と考えると吹く場所が決めやすいです。

ある程度細吹きで発色させたら、一度塗料を塗料皿に戻します。
クリアーで3倍以上に薄めた褐色クリアーを再調色。
全体に薄く吹き付けて「褐色肌」にしていきます。

先に吹いたシャドー色には強めに全体は均一に「あえて強弱をつけて」吹いていきます。
発色は「塗膜の吹き付け回数」で調整し「全体の色味」を整えます。

レジンキットなら塗装落とし(ドボン)は簡単

塗装が気に入らないので「ドボン(全部やり直し)」します

今回色味がオレンジに寄り過ぎな気がします。
またサフレスクリア塗装では「合わせ目を消す」のが不可能でした。

そこで「塗装のやり直し」をするために「全ての塗料を落とす」ことにしました。
レジンは対溶剤性が強いので「ラッカー薄め液」でも変形の心配がないです。
ジップロックで薄め液が少々浸るように「パーツを漬け込み(ドボン)」10分ほど漬けておきます。
「ドボン」の目的は塗料の分解なので、多少汚れた溶剤でも良いと思います。
取り出したパーツを「筆でなでて」残った塗料をこすって取り除きます。
しっかり塗料が落ちたら、あとは水道水など流水で洗えば綺麗になります。
残った溶剤は色が付いていますが、「ドボン専用の溶剤」として保存しておきましょう。

疑似サフレス塗装で褐色肌を塗ってみる

「ドボン」で塗料を落としたら、下地のやり直しでマルチプライマーを吹き付けます。
つぎに「EXホワイト」をベタ塗にしてパーツを艶々真っ白にします。

既にプライマーを吹いているので「ホワイトサフ」を使う必要性は低いです。
顔料系塗料なら、つや有りで塗膜は薄くしかも「合わせ目もしっかり消える」のがメリットです。

下地を白にしたら「サフレス褐色塗料」で再度グラデーション塗装を行います。
白下地を塗装しているため「レジンよりも透明感は落ちている」気がします。
塗料の重ね塗りでは極微量下地を侵す(混ざる)ので、仕方ないかもしれませんね。

マスキングによる塗り分

肌をマスキングして水着とストッキングを塗り分けます。

細切りマスキングテープは曲線追従性があるので出来るだけラインを出します。
あまり頑張らず、「スキマはゾルを塗って埋める」気持ちでラフにマスキング。

水着は赤くしたいので「下地にEXホワイト」を吹いておきます。

ストッキングは「透け塗装」を試してみたいので、肌のグラデーションを使ってみました。

水着赤色「ハーマンレッド 1:EXクリア 2」
一気に発色しないようにクリアで割りましたが「しっかり顔料系の赤」です。
下地を白色にしているので、薄く重ねてもしっかりした赤色になります。
ストッキングは「さらにクリアで3倍に割ったレッド」を使用しました。
肌色で付けたグラデーションを活かすように、シャドー部は強め目に、全体はフワッと。
吹き付ける回数で色味を調整しながら全体に吹き付けます。
クリアレッドなので下地の影響でややオレンジ味になりました。

破損したパーツを補修します

左腕が水着のマスキングの際、負荷がかかって取れてしまいました。
補修には瞬間接着剤を使用します。
瞬着での接着は衝撃に弱く「パキッ」と割れるので、再接着跡は比較的綺麗になります。
接着剤のはみ出しは最小限にして、ヤスリを#240番からかけてしっかり形状だししました。

サフレス塗装のリタッチは難しい

肌はグラデーション塗装なのでマスキングをしてエアブラシで部分塗装をします。
下地の白色からのサフレス褐色塗料での吹き直しです。
マスキング塗装は「テープ」の境い目で色味がくっきり分かれます。

ここでは背中にかけて大雑把にマスキングをしています。
結果「テープの境い目」がくっきりでてしまいました。
サフレス塗装はクリアを重ねるので多少はみ出しても、他の色への影響は少ないです。
水着等はパンツ等大きい面のみマスクして塗装した方が色味を整えやすいでしょう。
下地色を塗りつぶそうと狙って吹いていると「どんどん」色が濃くなります。
今回は実験の意味で「リタッチ」で仕上げています。
しかしながら、サフレス塗装は基本的に「後戻りが出来ない塗装方法」です。
実際「正面と背面で色味が大きく違う」結果になりました(すなわち失敗です)。
大きな修正は「ドボンして全てやり直し」した方が良いかと思います。

髪は3色グラデーション塗装

髪は茶髪をイメージしたグラデーション塗装にしてみました。
顔は大雑把にテープを貼り、スキマはゾルで埋めます。
胸あたりまでマスクして残りはラップでマスキングしました。

髪茶髪シャドー色「リノリウム色」暗いこげ茶色を選択。
毛先・毛束の谷間・つむじを狙って細吹きします。
どうせ修正するので、しっかり発色させました。

髪茶髪ハイライト色「タン」明るめのベージュを選択。
シャドーを潰さない程度に面の中心から吹き付けていきます。
ハイライトを先に吹いて「上吹きした基本色を剥がして下地を出す」塗装法を試してみます。
このサイズで「天使の輪のハイライト」を細吹きで塗るのはかなり難しいです。
ハイライトが削れスギないようにクリアーで保護しておきました。

髪茶髪基本色「ウッドブラウン 1:クリアー 2」明るめのこげ茶色を選択。
クリアーで発色を抑えて、ハイライトを残したいところをよけながら全体を発色させます。
基本的に顔料系塗料なので、しっかり発色します。

髪ハイライトは削り出しで露出させました。
「ヤスリスティックフィニッシュ」の緑の面(#1000番以上のヤスリ)でハイライトを削り出します。
力は入れず毛束に沿ってヤスリを動かします。
板ヤスリは基本的に「モールドの山側」にしか当たらないです。
光のあたる「でっぱり」を削ることで「不規則で自然な」ハイライトが表現できます。
ただし塗膜は非常に薄いので削り過ぎに注意です。

髪のリタッチをします

マスキングを剥がして塗り漏れを修正します。
リタッチは筆塗りで行いました。
シャドー色~ハイライト色~基本色とエアブラシと同じ順番で筆塗りします。
筆目がでないように、半乾きの筆で修正したい箇所に「ちょんちょん」と塗料をのせました。
「ドライブラシ」ほど完全には乾かさず「溜まった塗料を叩いて広げる」イメージです。

アイペイントをします

キットにはデカールがないので、頑張ってアイペイントをします。
私は絵心がないので、「右向きのイラスト」を探して見本にしました。
アイペイントのコツは「見本通り」「真正面の顔は避けて」「少しずつ」塗ることだと思います。

白目を塗ります

エナメル「ホワイト」をキットのアイホールに塗ります。
エアブラシを使いたいところですが、このサイズだと筆塗りでもよいです。
もう少し大きいサイズのキットなら「溶剤を拭き取ってレンジを白目色にする」のもよいです。
一度スプレークリアつや有りを吹いてエナメルを保護しておきます(セーブ)。

上アイラインを描きます

アイラインはエナメル「ハルレッド」で描きこみます。
上アイラインは目の「大きさ」「形」「高さ」「間隔」を決める重要な要素です。
見本を見ながら「目元」「上ライン」「目尻」と3パーツに分けて線を描きます。

筆で基本的な線を描いてから、はみ出しや線太さを「フィニッシュマスター」で削り出していきます。
目尻の内側など「ドット単位」の修正は「溶剤に付けた綺麗な筆」ですくい取りで行いました。
筆に溶剤が付きすぎると、描いた線が溶けて消えてしまいます。
手でしごいたり、ティッシュに吸わせたり「ほとんど溶剤の乾いた状態」で修正しました。
ここで2度目のセーブ。

瞳の輪郭とまつ毛を描きこみます

保護した上アイラインの上から瞳の輪郭を描きこみます。

かなり「小さい丸」を描きますが、修正を前提とせず「一発で形状を出す」気持ちで頑張ります。
もちろん一発で描けるわけはないので、「溶剤筆」で修正したり線を細くしたりしました。

まつ毛も出来るだけ細い線を削り込みでさらに細くして描きこんでおきます。
ここで3回目のセーブ。

二重線や瞳の虹彩などその他の色を置く

まつ毛を保護したのでかぶせるように二重線を描き足します。
瞳の虹彩は「ブルー+ホワイト」を塗料皿に出し、明暗2色を作ってグラデーションを掛けます。
まずは虹彩全体を水色で塗り、ほどほど(生乾き)に乾燥させます。
次にほとんど青色の水色で虹彩上側半分に色置きます。
はみ出しを削って瞳の輪郭線が見える様にしておきました。
眉毛は「ブラウン+イエロー」の髪の近似色で描きこみ。
唇は「ホワイト+レッド」のほぼ白いピンクを、下唇だけに乗せておきます。
ここで4回目のセーブ。

最後に瞳孔を入れます

瞳の中心に「ブラック」で瞳孔を描きこみます。

このスケールで綺麗な円形を描くのは私の腕では不可能です。
「溶剤筆」でこちょこちょと削り出し、「運よく綺麗な形になる」まで何度もやり直しました。
瞳孔は視線の向きを決め表情に生気を与える重要な要素なので頑張りました。

ここまでの筆塗りで白目が汚れたので「ホワイト」を塗り直します。
はみ出さないように注意して色を「ポンポン」と置くように塗りました。
あまり綺麗に塗らなくても、元々白色なのでそれなりに発色してくれます。

キャンディー塗装をしてみる

ヒールを塗り忘れていたので、きちんと塗分けます。

今回他の赤色と差別化のため、ヒールはメタリックレッドにしてみました。

テープで雑にマスクして境界はゾルで覆います。
まずは下地に「EXシルバー」を吹き付けます。
シルバーは隠ぺい力が強いので、赤色の上からでも簡単に発色します。
次に「クリアーレッド」を薄く何層も重ねていきます。
吹き付ける回数によって、「ピンクからレッド」に徐々に色味が変化します。
薄くは出来ないのでパーツ全体の調子を見ながら好みの色になるまで吹き付けました。
キャンデー塗装によるメタリックレッドは反射率の高い「キラッとした」色になります。
小さい面積の「ワンポイント」として「模型的に良いアクセント」になりました。

オーバーコートで質感を整える

今まで塗装工程で全体はつや有りのテカテカになっています。
褐色肌はツヤツヤでも「なまめかしくてアリ」とは思いますが・・・。
今回は水着と質感を変えたいのでつや消しにしました。
また、つや消しにすることでグラデーションの粗を目立たなくする効果も狙ってます。

水着とヒールはつや有りにしたいのでゾルで大雑把にマスク。
色を乗せるわけではないので、あまり厳密にマスクしなくても良いです。
つや消しには「GXなめらかスムースクリアつや消し」に雲母堂ミルキーホワイトパールを微量。
濃度薄め・圧弱め・レバー開度大でミストをフワッと充てると一瞬でつや消しになります。
パールを混ぜると「微細なテクスチャー」がついて「しっとりした質感」が出せます。

髪は「ホワイトパール」で白っぽくなったので、コートして修正。
「GXなめらかスムースクリアつや消し」をマスキングなしで吹き付けます。
クリア層ができて、白っぽさが抑えられ、肌との質感の違いも出ると思います。
全体のつやを整えたら完成です。

美少女レジンキットは難しいです

今回組立から塗装まで詳細に工程を紹介しましたが、レジンキットは独特の難しさがあります。

特に塗装は定着性の問題から「剥げ」との戦いでした。
小スケールの面相は目に厳しいです(画像は1/20スケールとの対比)
組立や表面処理もプラモデルとは違う「めんどくささ」があります。
ただ、レジンキットにしかない魅力もあるので「塗装を楽しむ人」にはおすすめ出来ると思います。

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