エアーブラシ塗装を始めるためにコンプレッサーとハンドピースも購入して、「さあ、塗装をするぞ」と思っても、実際には様々な段取りがあって「なかなか手が進まない」方もいると思います。
エアーブラシ塗装も野球やゴルフ同様「まずは素振りが基本」
いきなり「塗料の濃度」や「塗装ブース」で悩むのではなく、コンプレッサーとハンドピースだけで出来る練習から初めて「エアーブラシ塗装の段取り」を知っておきましょう。
ここでは、あえて塗料は使わず「エアーブラシの操作方法」と「準備・あとかたずけ」のみ解説します。
せっかく買った高価な道具を「まずは動かして」みましょう。
塗装をする前に必要な道具を確認します
今回は使用しませんが実際塗装をする時に最低限必要なものなので、揃っているかチェックしてみましょう。
- 持ち手と乾燥台(市販品も安いので2セットぐらい用意します)
- 段ボール箱(30cm角ぐらいの大きめのもの。ぶつかって落ちた塗装ミストを受けとめる「塗装ピット」)
- 猫の爪とぎ(塗装フィルター代わり。塗装ミストをぶつけて減速させて、塗粒を下に落とします)
- 防毒マスク(下に落ちなかった塗粒や臭い粒子を防ぎます。臭気は粒子が細かすぎて基本的にフィルターではとれませんので吸収缶付きのものを使います)
- 塗料皿2枚(金属製がよい。塗料用と溶剤用で最低2枚は用意します)
- 調色スティック(塗料攪拌用。塗料をビンから皿に移すのにも必要です)
- スポイト(塗料の濃度調整用。ハンドピースの清掃にも使います)
- ティッシュ(塗料の拭き取り用。お金に余裕があればキムワイプが埃がでなくて便利)
- 綿棒(ハンドピース清掃用。100均のもので十分です)
- 溶剤(エアーブラシ塗装では大量に使うので特大を買いましょう)
塗装ブースはあった方がいいですが、高価なので今回は自然換気での使用を考えています。
エアコンで吸気を行い、排気用に窓を少しだけ開けて、「臭いがなくなるまで換気」でもなんとかなります。
エアブラシならスプレーと違い圧倒的にミスト量は抑えることができますし、落ちた塗粒は掃除すればよいかと思います。
エアーブラシの動作確認をします
コンプレッサーのスイッチを入れたら、まずは圧力計を確認します。
なにも操作をしていない状態で「仕様上の最高圧力(L5なら0.1MPA)」が出ていない場合は、接続部のねじが緩んでいる・圧力計のハンドルが閉まっていない等、組立不良の場合が多いです。
特にハンドピースの接続ネジが緩んでいることが多いので確認しておきます。
ボタンを押してエアーを出す
ボタンは押しこむ量によって「吐出エアー量を調節」できます。
まずはいっぱいまでボタンを押し込んで「エアーの出ている音」をよく聞いてみます。
少しボタンを緩めると「音が小さく・エアーも弱くなる」のがわかるかと思います。
しかしながらボタンのストローク(押し込める量)は思いのほか小さいです。
したがって実際に塗装をする際はボタンを最大に押し込んだ状態で使用できるよう、吐出エアー量の調節は「レギュレーター」で行った方が良いです。
エアー量の調節は「慣れると強弱がつけられる」程度に考えると良いでしょう。
ボタンを引いて塗料を出す
ボタンを引く量によって「塗料の出る量を調節」できます。
まずはボタンをいっぱいまで引けるか確認します。
途中で引っかかるようならハンドピース後方の「ニードルストッパー」を時計反対周りで開放します。
「全開の状態」を確認できたら指をかけたまま「ニードルストッパー」を時計回りで締めこんでいきます。
ゆっくりと「ボタンが前方に戻る」感覚を確かめておきます。
実際に吹き付ける時は「半分程度引いた余裕のある状態」で「吹き付ける面積が最適」になるように使用します。
ニードルストッパーは使わず「全閉と全開の半分の位置」を自分の手で調節できるように練習しましょう。
前後の動きは比較的微調整も利くので慣れれば「広い面から細い面(線)」まで自由に吹けるようになります。
レギュレーターでエアー圧を調整する
通常コンプレッサーが作り出す圧縮空気はプラモデルを製作するには強すぎるため、レギュレーターで減圧してハンドピースからでるエアーの吐出量を適度に抑えて使用します。
まずはボタンを押してエアーが出ている状態で、レギュレーターのハンドルを少しずつまわしていきます。
このときエアーブラシを耳の後ろ側に持ってきて「音と耳に当たる風量」を確認しながら作業します。
圧力計を見ながら「0.02~0.05MPA(メガパスカル)」の間で調整してみます。
ボタンを離すとエアーの逃げ場がなくなって少し圧力計が戻ります(最大圧力)。
ボタンを押した状態の圧力が「定格圧力」です。
エアー圧はこの「定格圧力」で調整することになります。
レギュレーターの調整は「かなり繊細な調整」になりますが、圧力計の数値はあくまで目安なので「音と風量」をしっかり覚えておけば、作業するうえではそれほど誤差を気にする必要はないでしょう。
今回は空吹きですが、塗料を入れた状態でもボタンを引かなければ塗料はでないので、私は通常作業時でも「耳裏にエアーを当てながら」圧力調整しています。
試し吹きをしてみます
塗料カップ半分ぐらいに水を入れて試し吹きをしてみます。
圧力は調整せず「ボタンを押して」エアーだけが出るか確認します。
ここで水が出る場合「ニードルがずれている」ことが多いので後述のブラシ清掃の分解手順で調整します。
「ボタンを押しながらゆっくりと引く」と水がミスト(霧)状に噴出されます。
まずは新聞紙などを目掛けて自由に吹きつけてみてください。
エアーブラシの吹き終わり方を練習します
エアーブラシの吹き終わり以下の2段階の操作で行います。
- ボタンを前方に戻して塗料をとめる
- ボタンを離してエアーをとめる
ニードルは戻るときに先端の塗料を押し出します。
そのためエアーが先に止まっていると、ノズル先端の押し出された塗料が溜まる場合があります。
ノズル先端に塗料が残っている(溜まっている)状態で次回エアーを吹き始めると、溜まった塗料が一気に飛んで塗面に大きな水滴がつく事故になることがあります。
「吹き終わりの操作」はこれを防ぐためです。
ただしこの操作は「すごく忘れやすい」ので、私は「吹き始める前にエアーだけ空吹き」してからパーツに向かって吹き始めるのが癖になりました。
まずはゆっくりと吹けるように練習する
ここまで吹いてみて「水が思いのほかすぐに無くなる」と思われるかもしれません。
特に初心者の頃は広い面を吹こうとボタンを引きすぎて塗料を出しすぎたり、速く発色させようと同じ場所を長く吹きすぎたりしがちです。
慣れるまでは、近距離でゆっくり手を動かして塗装できる方が失敗は少ないと思います。
そのためにもレギュレーターによる圧力調整で低圧にすることはとても大切な作業になります。
巷で流行りの「高圧・高濃度一気吹き」は塗料の消費量や換気の難しさから初心者にはおすすめできません。
エアーブラシ塗装は「吹いてる途中に塗料が切れる」と一気にやる気が落ちます。
「低圧・低濃度重ね吹き」でゆっくり発色させる方が初心者には「やりやすい方法」だと思います。
「うがい」をしてみます
ノズルキャップを1回転ほどゆるめて前進させることにより、ノズルの先端よりキャップの内壁が前に来てエアーの流れが変わります(当然ボタンを押しただけだとエアーはキャップ先端からでます)。
そのまま、ボタンを押しながら引くと「塗料が流れる流路が逃げ道になって」エアーがカップ側にも逆流します。
カップの底から逆流した「エアーの泡がたてるコポコポ音」が「うがいの音」に聞こえるので、この動作を模型用語で「うがい」と言います。
「うがい」の効果は泡の衝突による塗料の攪拌や洗浄になります。
まずは水をいれたカップで「ボタンの引き方による泡の出方の違い」を確認します。
ボタンをゆっくり引くと「ニードルが下がり塗料の流路が広がって」泡の勢いが変わるのがわかります。
これが通常の「塗料の吹き付け量の調整の感覚」と同じなので、なめらかに調整できるように「ゆっくり動かす」練習をしておきましょう。
塗装後のハンドピースの洗浄方法
塗装が終わったらすぐにハンドピースを洗浄します。
塗料は放置すると乾燥硬化によるニードルの固着や次回に塗料を使うときに混ざって思わぬ色になったりします。
まずはカップに残った塗料をビンに戻します。
「ビンに薄めた塗料を戻すと、塗料の特性が失われるのでダメ」と聞きますが、正直私の目ではその状態を確認できたことはありません。
どうしても気になる人は「捨てるのが無難」です。
ちなみに私はメタリックカラーでもビンに戻して使っています。
残った塗料は最大圧力で吹き飛ばします
音がしなくなるまで、ボタンを前後に動かして塗料を送り出しカップを空にします。
カップを洗浄します
1回目はニードルがかぶるぐらいツールクリーナー(溶剤でも可)をカップにいれて「うがい」をします。
「うがい」の目的はニードル周辺の洗浄なので、なみなみとツールクリーナーを入れる必要はありません。
「うがい」はカップからこぼれない程度の勢いで最低15秒ぐらいはしましょう。
1回目の「うがい」が終わったら、廃液を捨てずにそのままティッシュを突っ込んで、カップ内側の塗料を拭き取ってしまいます。
全てティッシュに廃液を含ませたら、ノズル先端に残ったて廃液をエアーで吹き飛ばしておきます。
2回目もニードルをかぶるぐらいツールクリーナーをカップに入れて同様に15秒ほど「うがい」をします。
廃液はまだまだ塗料ついている状態ですが、気にせず拭き取りと吹き飛ばしをしてカップを空にします。
カップ内部の汚れを落とします
次に本体後部とニードルチャックのネジを外して、ボタンを押しながらニードルをゆっくり引き抜きます。
ニードルを抜く時の注意点は「カップに塗料が残った状態で引き抜かない」ことです。
チャック内に塗料が逆流すると本体にも塗料が流れ込み洗浄がとてもメンドクサイことになります。
ニードルはとても繊細ですが非常に硬いので、「落下」や「横からひねる」など注意すればめったに歪みません。
ニードルを拭き取ったら、ニードルを抜いた状態で溶剤をつけた綿棒で「ノズル先端付近」「カップ底」「ニードルパッキン付近」など、「ニードルの影になる部分」をこすり洗いしておきます。
ニードルとニードルパッキン付近の汚れを落とします
引き抜いたニードルには塗料がべったり付いていますので、先ほど廃液を拭いたティッシュを使ってニードルに付いた塗料を拭き取ります。
拭き取ったニードルは引き抜く時と同様ボタンを押しながら一旦ゆっくり戻します。
この時注意するのはニードルのお尻を押さず横からつまんで、「ニードルが奥で止まったら絶対に力を入れない」ことです。
ノズルの先端は非常に繊細でニードルより少し柔らかいので「力をかけると広がる」可能性があるためです。
ただし、あくまでどちらも金属製なのでそれほど神経質になる必要はないと思います。
ニードルを戻す際カップからニードルを観察すると「塗料が付着している」が見えると思います。
これは「ニードルパッキン周辺に残った塗料がニードルに乗ってる」証拠です。
再度ニードルを抜く、拭き取る、ニードルを戻すを繰り返して洗浄していきます。
ニードルの抜き差しの目的はパッキン付近の汚れをこすり取ることなので、洗浄時は毎回ニードルを先端まで戻す必要はありません。
10回程繰り返してニードルに汚れが移らないようになれば、パッキン周辺の汚れが落ちたことになります。
最後にニードルが「すっと止まるところ」まで戻して、チャックネジとアジャスターを組立なおします。
拭き取ったカップを再度洗浄します
組み立て後しっかりボタンが動作することを確認したら、きれいな溶剤を入れて「うがい」をします。
ノズル先端の汚れが取れて少し色が付くかと思いますが、2回程うがいをすればほぼ「透明な状態」になります。
少し色のついた廃液は塗料皿にとっておきます。
ノズルを洗浄します
ニードルキャップとノズルキャップを外して、廃液に浸してから綿棒で塗料を拭き取ります。
ニードルキャップの内側とノズルキャップの穴の周りは特に汚れているのできちんと洗浄します。
最後にノズル先端に溜まった塗料を清掃します
溶剤を付けた綿棒を「ノズルとニードルの境い目」に横から優しく押し付けて、ボタンでニードルを前後に動かしながらノズル先端の塗料を押し出して拭き取ります。
綿棒をよく見ながら色が付かなくなるまでボタンで塗料をかきだします。
ニードルを傷めないようにノズルキャップとニードルキャップを組み立てたら、最後に空吹きをしてカップ内に付着した溶剤を飛ばして清掃完了です。
なぜハンドピースのいちいち分解清掃するのか
ハンドピースの清掃は、下記の手順が一般的です。
- カップに溶剤を2分の1ほど入れてうがい。
- 色が付いた溶剤は捨てる。
- カップ内のニードル周辺は筆や綿棒で掃除。
- カップに入れた溶剤に色が移らなくなるまで繰り返す。
- ノズル先端は溶剤を付けた筆で清掃する。
この方法でも一応「次の塗装に影響がない程度」にはきれいになります。
ハンドピースの一般的な清掃方法はデメリットも多い
私は次にあげるデメリットを考えて毎回分解清掃しています。
- 溶剤を大量に消費するので、コスト(価格はもちろん在庫確保の手間)がかかる
- 廃液が大量に出るので処分に困る(廃液は基本的に流しに流すわけにいかない)
- パッキン周辺の塗料が残ってニードルが動かなくなる(エアーブラシは毎日使うわけではないので残った塗料が完全乾燥してしまいカチカチに固まる)
- ニードルの固着を無理に直そうとしてニードルやノズルを曲げる(こうなるとメーカー修理)
エアーブラシ塗装のトラブルを防ぐ
エアーブラシの悩みとして「メタリックが次の塗料に溶け出す」「色が移る」「久々に使ったら動かない」などをよく聞きますが、毎回分解清掃さえしてしまえば「基本的に問題がでることはありません」。
- 「ハンドピースをクリア用・メタリック用・サフ用・塗装用と用意して使い分ける」
- 「次回使用するまでカップに溶剤を入れっぱなしにする」
- 「明るい色から吹き始めて段々暗い色を吹く」
など「効率よく洗浄・塗装をする」方法はありますが、一般的なモデラーは毎日塗装をするわけでもなく、無限に道具にお金をかけれるわけでもないと思います。
分解清掃はメンドクサイですが「洗い物の基本」は「流水だけでなくこすり洗い」です。
塗装後の休憩も兼ねて、ゆっくりお掃除してもそれほど手間も時間も増えないと思います。(個人の感想です)
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